|
|
【ブログ】 南米ブラジル美容医療を探る 久保田潤一郎 |
はじめに
南米大陸で最大の面積を誇るブラジルは以前より美容医療大国として知られている。過去にはヨーロッパの富豪たちがブラジルを訪れ、美容医療を受けたとの報告があった。一方、筆者が形成外科医を目指した45年以上前は本邦においては美容整形外科と称する一部の医療機関が存在するのみで、形成外科医は先天異常児や熱傷・熱傷後瘢痕拘縮や交通事故に伴う顔面外傷の治療また悪性腫瘍などによって失われた形態・機能の修復などが主たる業務であった。ところが最近は急激な美容医療領域の拡大があり、参入する医療機関や関連企業の増加で医療現場は混乱している。
そこで、ブラジルの美容医療事情(特にアンチエイジング医療)を探ることで、日本の将来を予測できないかと考え、令和8年(2026年)5月10日から5月24日にかけてブラジルを訪問した。
訪問した都市はブラジル南部のパラナ州の州都であるクリチバである。
クリチバはブラジルで初めて大学が設置された都市であり、ブラジル南部では最も大きな癌治療病院がある。
クリチバの人口は約196万人(2021年現在)、人口構成は白人が約78%で東欧系移民が中心で、ドイツ系、イタリア系も多い。日系人はサンパウロに次ぐ規模で3万人ほど居住しているとされている。
街並みは整然としており、ゴミが散乱しているようなことはなく清潔である。
旧知の形成外科医が居住していることもあり、病院見学など便宜を図ってもらえることを期待して訪問都市として選択した。
ブラジルの美容医療の現状
若年者の美容医療は医療費が高額になることも起因して、盛んではない。特に日本の若年者に多い、二重瞼、隆鼻、顔面輪郭形成は白系人種にルーツを持つブラジル人では需要が少ない。また、豊胸術より臀部の形成(ハリのある大きなヒップ)や体型に関する治療の希望が多い。
壮年、高齢者に対するアンチエイジング医療では肥満に伴う体型の変化に対する形成術の需要が多い。日本では脂肪吸引術で対処することが多いが、ブラジルでは脂肪吸引術だけでは効果が少ないため、余剰の皮膚と皮下脂肪を筋膜上から切除し、緩んだ腹壁を引き締め、臍形成を行なったのちに鼠蹊部に皮膚を縫合するタミータックという術式が主流となる。非常に侵襲の大きい手術であり、術者の技量によって大きく結果が左右される。その上、生命の危険を伴う手術法でもある。また、同時に行われることが多いのは加齢に伴って起こる乳房下垂に対する形成術である。ブラジル人の乳房はボリュームが大きく、下垂量も大きいので、手術瘢痕が長くなる欠点があるが根治的な術式が選択される。患者は乳房下垂を治してもボリュームは減らして欲しくないという要望が多く、我々の行う手術方法とは若干異なる方法で工夫を凝らしてボリュームを維持している。
男性では若年性禿頭が多いために、植毛や育毛の需要が多い。再生医療を応用した育毛治療が効を奏している。女性の育毛も盛んにおこなわれている。
ブラジルの診療形態
プライベートクリニックで新患を診察し、治療の方法や治療スケジュールを決定。局所麻酔で可能な手術はプライベートクリニック又は契約病院で施行。全身麻酔が必要な症例は契約している病院に入院の上、手術を行う(米国の診療スタイルに類似)。
実際に見学した症例では、全身麻酔下に先ず腹臥位で背部の脂肪吸引、吸引した脂肪を臀部に注入、その後仰臥位にして乳房挙上術、タミータック術を施行していた。出血量は1000mlに至らず、輸血なしで全ての手術を終了する技量には驚愕した。持続吸引バッグを腹部に留置し手術を終了した。その後の経過について質問すると、驚きの返答があった。
術後経過
手術翌日、持続吸引バッグを着けたまま退院。
その後はプライベートクリニックで管理。通院治療に移行するという。
プライベートクリニックの仕事
新規患者の相談、診察、治療方法や治療計画の提示
全身麻酔で行なった手術患者の術後管理
育毛治療
皮膚科専門医と共同経営で育毛に関する診療を展開している。ブラジルにおいても同業者との経営における競争は激しく、チェーン展開する皮膚科医との共同経営は必須のようである。
育毛治療の実際:ミノキシジル、デュタステリド、アミノ酸、ビタミンB群等の内服に加えて薬用シャンプーを使用する。また、自己多血小板血漿(PRPと略す)療法も並行して行われている。PRPを直接頭皮浅層に注射する方法で育毛を促す方法である。本邦では「再生医療等安全性確保法」によって規制されているが、ブラジルには本療法を規制する法律はないので、全ての医療機関で施行することができるが、未だ育毛治療を中心に施行されているようである。
スキンケア
ブラジルは美容大国と言われるほど美容に関する需要が多いが、スキンケアの重要性については十分理解されているが、化粧品・スキンケア製品が主体で、医療機関への通院治療はこれからという印象を持つ(但し一般庶民について。富裕層はその限りではない)。見学できた医療機関では現在スキンケアについての研究を進めており、今後診療に取り組む予定であるとのことであった。
以上、今回の訪問でブラジルの美容医療の一端を垣間見ることができた。
開示すべき利益相反事項は無い。
2026年9月1日掲載
写真 01 全身麻酔手術中
写真 02 手術終了後
写真 03 プライベートクリニック外観
写真 04 育毛:PRP療法
写真05 プライベートクリニックスタッフと共に
|
|
NPO法人日本アンチエイジング医療協会 事務局
〒171-0043東京都豊島区要町3-12-12 コードンブリューV201
TEL:03-5911-5524 |
|
|